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電子的なアラーム音が鳴り響き、私はゆっくりと瞼を開けると携帯に手を伸ばした。
(お……重い……)
やけに重たい腕を懸命に伸ばすと、やっとの思いで届いた携帯を掴んでアラームを止める。次第に覚醒されてきた頭をゆっくりと動かすと、私は後ろを振り返った。
視界に入ってきたのは、長い睫毛が生えた瞼をきっちりと閉じる彫刻の様に綺麗な顔。ミルクティー色に染められた髪が私の頬に当たってくすぐったい。
「ひぃくん……」
小さく溜息を吐くと、私の身体に乗せられた腕を退かそうと動かしてみる。
(重たい……)
意識のない身体は思った以上に重たく、私はまた小さく溜息を吐いた。
「ひぃくん、起きて」
腕を退かすのを諦めた私は、その腕の主を起こそうと身体を揺すってみる。
目の前にある綺麗な顔は、相変わらず瞼を閉じたまま「んー」と小さく声を漏すと、私を抱き寄せてキツく抱きしめる。
腕を退かしてもらいたかったのに、これでは益々動けない。苦しさに小さく声を漏らすと、抱きしめていた力がふっと弱まった。
緩められた腕の隙間からそっと顔を上げてみると、綺麗な二重まぶたから覗く少し茶色い瞳と視線がぶつかる。
「おはよー。花音」
私を捉えた瞳は優しくその形を変えると、ふわりと微笑んだひぃくんは私の頬にキスをした。
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