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「もう……また勝手に入ってきたの?」
溜息まじりにそう声を漏らすと、たった今キスをされた頬をゴシゴシと擦る。
「んー。花音と一緒じゃないと眠れなくて」
フニャっと微笑んだひぃくんは、そう言って私を抱きしめると再び頬にキスをする。
何度も……何度も……。
「やー! ひぃくん、やめて!」
「んー、可愛い。花音」
私は本気で嫌がっているというのに、ニコニコと微笑むひぃくんはガッチリと掴んで離さない。
ベッドの上でジタバタと暴れていると、廊下からバタバタと走ってくる音が聞こえた──次の瞬間。私の部屋の扉は乱暴に開かれた。
────バンッ!
目の前の扉から現れたのは、スラリと背の高い黒髪の美しい人。
その綺麗な顔は、私の横にひっついているひぃくんを捉えると途端に鬼のような顔に変わる。
「響……」
唸るような声を絞り出すと、ギロリとひぃくんを睨みつける。
「お兄ちゃん……た、助けて……」
私はその鬼──ではなく、お兄ちゃんに向けて助けを求めた。
ズンズンとベッドへと近付いて来ると、私の横にひっついているひぃくんの首根っこを掴み上げたお兄ちゃん。
「また来たのか……響」
「あ、翔。おはよー」
鬼の様な形相のお兄ちゃんとは対照的に、相変わらずニコニコとしているひぃくん。
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