私の幼なじみはちょっと変

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 お兄ちゃんに首根っこを掴まれたまま、ズルズルと引きづられてゆくひぃくん。 「花音、また後でねー」  相変わらずニコニコと微笑んでいるひぃくんは、ヒラヒラと手を振ると私の部屋から廊下へと連れ出される。  そんな二人の姿を静かに見送った私は、大きく溜息を吐くと閉じられた扉を見つめた。  あんなんでも──実はひぃくんは凄くモテる。  お兄ちゃんとは対照的な雰囲気だけど、同い年の二人はその人気を二分にして、昔からよく学校の女の子達から騒がれているのだ。 (私だって……)  何を隠そう、実は初恋はひぃくんだったりする。  まるで絵本の世界から出てきたかのように、王子様みたいにカッコイイひぃくん。性格だって優しいし、一見すると申し分ない。  ただ、ひぃくんはちょっと変。  私がそれに気付いたのは、小学四年生の頃だった。  休み時間に廊下でクラスの男の子と話していると、突然やってきたひぃくんが男の子を殴った。  私の目の前で豪快に吹き飛ぶ男の子。周りでは悲鳴が聞こえ、殴られた男の子は床に尻もちを着くと呆然とひぃくんを見上げる。  あっという間に騒ぎになった廊下に、誰が呼んだのか気付けば先生が駆けつけていた。  何で殴ったのかと問いただす先生に、ひぃくんは口を開くとこう言った。 「蚊が止まってました」 ((……そんな訳あるはずない。今は二月だ))  その場にいた全員が思った。
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