ハイデル騎士団

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ハイデル騎士団

国格彩石(さいしゃく)判定師ミナ・ハイデル。 ハイデル騎士団は彼女の護衛として付けられた騎士団だ。 国格とは、国の重要人物として相応の扱いを求める、という意味だ。 彩石とは、この大陸に住むすべての人が持つ、土、風、水、火の異能を助ける働きを持つ石のことで、判定師は、この彩石の完全体と不完全体を見極める。 本来はそれだけのはずなのだが、彼女は、大陸にただひとつある火山に設置された、結界という名の保護膜を修復し、ひとつの町を救ったことに始まり、数々の大きな働きをしてきた。 そのことにより、ハイデル騎士団も注目を浴びることとなり、鍛練中もじっと観察されていることが多くなった。 ハイデル騎士団団長ムティッツィアノ・モートン…ムトは、今日もほかの騎士たちの視線を感じながら、鍛練を開始した。 ここは黒檀塔。 アルシュファイド王国軍の中枢であり、騎士たちが寝起きするための場所でもある。 その土の鍛練場を使うのだから、視線が集まるのも当然だった。 皆が遠巻きに見守る中、同じくハイデル騎士団員のスティルグレイ・アダモント…スティンが声を掛けてきた。 朝の挨拶を交わして、例の土の技か、と言う。 「ああ。量が今ひとつ調整できていないらしい。あと、砂を蹴る感触に慣れないと、この技は使えない」 ムトが今、やっているのは、同じ空間に砂を出現させて、その上に乗ろうという試みだ。 出現させた砂はすぐ下に落ちてしまうのだが、これをひとつところに収めようとすると、一瞬だけその空間が硬化して、上に物を載せることができるようになるのだ。 「砂だけでいけるか?」 「ああ。ほかのものも配合も試したが、砂が最も体を支えるのにいいようだ」 「どれ、俺もやるかな」 スティンがそう言って、胸の前で手を地面と水平に置き、砂の出現とともに下に押した。 すると、手は一瞬の抵抗を受けたのち、下にさがった。 「ここまではできるんだよな」 「問題は体重を支える量だ」 これはそれぞれ違うので、自分でやってみるしかない。 ムトとスティンは、出現させる場所を足元にして、その上を歩くようにしてみた。 どんどん量を多くしていき、これで出来る、と思った分量で、今度はその上を駆けてみる。 時機を合わせるのは難しいが、これさえできれば、空中を駆けることが可能だ。 夢中になってやっていると、火の鍛練場から声が掛かった。
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