眩しい人

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この話をしてから、チーム内で、俺と順也の距離は前よりも近くなっていった。 3年になると、順也が部長になり、俺は副部長になった。 俺達は、あの日順也が言ったように、部活内の上下関係を取っ払い、チーム全体で上を目指し始めた。 相乗効果、まさにそれだった。 練習試合も公式試合も、その都度レギュラーは入れ代わる。 その時ベストな奴が、試合のコートに立てる。 皆が努力し合う中で、皆が磨かれて実力を付けていった。 春の段階で、順也には県外の高校からスカウトがあった。 同じ高校を目指したかったけれど、そうなってしまうと、どうする事もできない。 諦めるしかなかった。 夏が近付くと、他の部員もスポーツ推薦を狙って、高校見学に行ったり、塾を優先したり、最後の大会を目前にして、メインでコートに立つのは1、2年が増えてきた。 3年で練習に休まず参加していたのは、順也と俺。 県大会の決勝で敗れるまで、殆どの時間を一緒に過ごしていた。 結局、全国にはいけないまま、俺達は部活を引退した。 夏休みも残り半分を切った頃だった。 「終わっちゃったね。」 試合からの帰り道、目に涙を溜めて呟いた、順也の顔が忘れられない。 やりきった、という満足感と、試合に負けた悔しさ、終わってしまった空しさ、あらゆる感情の交ざった、綺麗な目をしていた。 ずっと…隣で支えて、ずっと…順也が笑顔でいられるように、俺に…できる事…。 考えても答えは出なくて「あぁ…だな。」と気の効かない返事をした。
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