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気がつけば彼は見たことのない風景を目にして立っていた。
濃い闇が支配するその場所の空には月も星もなく、舗装されていない半径50メートルほどの広場の中央には櫓(やぐら)が高く組まれていて、最上部では炎が天を目指さんとばかりに燃え盛っている。
『あぁ、死後の世界はあるんだな・・』
羽黒研次(はぐろ けんじ)は右手で首を軽く撫で、違和感のないことを確認すると疑うことなくこれを受け入れた。
なぜなら彼の記憶は自殺したところまでだったからである。
もしこれが夢であっても現実に帰れば首を括った状態に戻ってしまう。
彼は戻る場所を自ら閉じたのだからこれからのことは全てを肯定しなければならない。
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