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儂の大事な者は、存在はしないから。まあ、ここで命を絶つのも、それはそれでありかも知れぬし。これはこれで仕方がない事だと諦めるしかないかの……。
『でも、あれ? ちょっと待てよ?』
儂にはまだ、大切な者がいたような気がする……。でも会ってもよいのだろうか、あの人と!?
それにあの人は、儂の事を許してくれるのだろうか?
酷い女だと思われたりしないだろうか、あの人に?
でも、どうせ死ぬのなら、最後に遭いたいよ、愛おしいあの人にね。
そう思うと儂は、居ても立っても居られなくなってきたのだ。
だから勇者に「……えっ? い、いや、いやよ──死にたくない──!!」と、儂はそう告げて、最後の魔力を集め振り絞り、儂の最大の奥義を使用したよ。
「……ん? 魔王?」
「絶対に死にたくない、最後にあの人に会うまでは──こうなれば勇者、お前もろともあの世に連れていってやるわ──」
「な、何を? ま、魔王──きゃ──」
儂と勇者は、この言葉を最後にあの世にいってしまった。
◇◇◇
〈ドッカァ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア~ンッ?〉
「……あっ、あああ、やった? やったかも知れないよ……?」
おっ、俺、急ブレーキを掛けたけど!
ど、どうもね、ま、間に合わなかったみたい!?
いきなりさぁ、車の前に沸いた光の玉──。
それを車がさ、光の中にいたある物と衝突したと思う!?
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