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ところが……
拓未がやって来る前日になって、再度姉から電話がかかってきた。
「念のため、言っておくけど……、拓未の荷物には気を付けてね。うっかり開けたりしたらダメだよ」
「『開けたらダメ』なんて、『開けろ』のフリとしか思えないんだけど?」
笑う私に、姉は至極真面目な声で言った。
「マジで。絶対に開けるな。大丈夫、拓未はちゃんと管理できるから。恵美は部屋に入らなきゃいいんだから。
掃除? んなもん、しなくていいのよっ!」
だんだん、鼻息が荒くなる……
その場は、これ以上聞いたらいけないような気がして、黙って電話を切った。が、その夜拓未のお父さん、つまり義兄から電話があった。
そして知ったのだ。
拓未が、ガマカエルと生き餌を持参してうちに来ることを。
『恵美ちゃん、ごめんね。でも、恵美ちゃんも生き物飼ってるから大丈夫だよね?
子供の頃、よくカエル捕まえて遊んでたんでしょう? え? 生き餌? 大丈夫だよ。
拓未はもう大きいし、恵美ちゃんに迷惑かけないから。
お土産買ってくるよ。ほら、恵美ちゃんが好きな、アレ……』
サラリーマン・プロの称号は伊達じゃない。
山千海千のネゴシエーション力をもって、『嫌だ』なんて言う隙を義兄は私に与えなかった。
しかし。しかしだ。
いざ、目の前に現れた『飼育ケース』は、透明だった。
つまり、中身丸見え。
安心できません。見えてますよ?
中で蠢いている、黒々とした無数の生き物の姿が……。涙
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