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「おじゃましまーす」
このまま私と話していても埒が明かないと悟った拓未は、そうそうに部屋に上がりこみ、拓未用に片付けた部屋へと入っていった。
ダイニングに部屋が2つ、というこの小さな空間に、一体どのくらいの命が存在しているのだろう。
考えだすと、宇宙空間が広がりそうな気がするので、私も気を取り直して部屋へと入った。
拓未は床に飼育ケースを下ろすと、リュックの中からこまごましたものを出して並べた。
「何に使うの?」
後ろから声をかけると、嬉しそうに振り向いて手招きする。
近づいて覗きこむと、小さなスケール、トレイ、ピンセット、などなど……、理科の実験に使うような道具だ。
「あのね、恵美ちゃんに教えておくね。はい、ここに座って。見ててね!」
自分の隣を指さし、私がその通りにすると、いきなり飼育ケースを開けた。
「ひぃっ!!」
飼育ケースの中身には、先ほどよりも鮮明に見える黒々とした昆虫が蠢いている。
「こ、の中、何匹いるの?」
怖いもの聞きたさで、訊いてみると
「うーん……」と首を傾げてから
「100匹くらいかなぁ、たぶん」と、あっさり言い放った。
「それより、見ててね」
唖然として何も言えない私に、自分の手元を見ろという。
拓未がこれからやろうとしていること、それは……
ガマガエルの餌やりだった。
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