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「まず、ゴキを選びます。えっとね。このくらいの大きさ」
拓未は器用にピンセットでゴキブリをつまんだ。
大きさは中くらいで、三葉虫のような見た目の虫だった。
「なんか、ダンゴムシっぽいね?」
「これはね、まだ2齢幼虫なんだ。成虫になってない個体なんだよ。
ガマくんまだ小さいから成虫はあげてないんだ~」
私の質問に目を光らせて、嬉々として答える。
本当に好きなんだな、とつい絆されそうだ。
「で、このこたち3匹をカップに入れて測りまーす」
小さなスケールの上にプリンカップの容器を置き、ゼロに設定してから虫をポイポイ入れていく。
「60、03グラム。すごいでしょ。これね。100分の1グラムまで測ることができるんだよ!」
「へぇ~、すごいね」
そう言いながら私は、果たしてカエルのエサの重さごときに100分の1グラムが必要なのだろうか…と首をひねったが、あえて何も言うまい。
「測り終わったら、このノートに記録を書きこむの」
そう言って小さなノートに数字を入れている。
日付、虫の数、虫の総重量。食べ残しがあるかないか、など。
「それでね、毎月ガマくんの重さを測って、増えた体重と与えた餌の重量を比べるんだ。
そうすると、どのくらい身になって、どのくらい排出されているかわかるでしょう?」
「へぇ~、すごいね。夏休みの自由研究にしてるとか?」
私が本気で感心して言うと、拓未は胸を張って
「自由研究でもあるし、僕の研究でもあるんだ」
そう、ドヤ顔で言った。
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