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高校二年生の春、僕らは初めて同じクラスになった。それまでお互い面識もなく、少なくとも僕は彼の存在すらも知らなかった。その日僕は放課後、教室で一人日直の仕事をこなしていた。そんなとき、どこからか吉川くんが現れ、突然話しかけてきた。
「ねえ、いいんちょ。何してるの?」
それが始まり。
「……吉川くん、だよね? 〝いいんちょ〟って僕のこと?」
「ここにはいいんちょと、ボクしかいないよ」
「あの、僕、別に委員長はやっていないんだけど……」
「でも見た目がいいんちょっぽい。メガネとか、メガネとか、メガネとか」
「メガネだけ?」
「あと真面目だけど、気が弱そうなところとか」
「そ、そうなんだ。……あ、ひょっとして僕の名前が分からない? クラス替えをして、まだ一週間だしね」
「いいんちょは、いいんちょでしょ?」
「えっと、一応言っておくね。僕は和泉司いずみつかさ」
「で、いいんちょは何をしてるの?」
「……日直の仕事」
どうして吉川くんが僕に話しかけてきたのかは分からない。いくら思い返してみても、接点やきっかけはこれと言ってなかったと思う。ただ、その日以来どういうわけか、彼はちょっかいをかけてくるようになった。
「いいんちょの、そういう困った顔もおもしろい」
「……えっと、そっか」
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