こんな天気のいい日には

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「違うよ。これはファンタジーだけど、他にもミステリー系で集めているシリーズもあるし、ジャンルは関係なくてずっと追いかけている作家さんもいるよ」 「そっかー」  彼はひじをつくのをやめて、僕と同じ目線の高さになる。 「いいんちょってさ、本当に本が好きなんだね」  まっすぐな瞳と、楽しげな笑み。そこに乗る何気ない言葉。裏表なく、純粋にそう感じたから言ったのだろう。彼からは好意的なものが伝わってきた。  だけどその一言に対し、すぐに言葉を返すことができなかった。後ろめたい気持ちがあふれてくる。胸に小さな痛みが走った。 「……好き、だよ」  ぎこちなく紡いだ言葉。声量も小さくなる。変だと思われなかっただろうか。こちらの気持ちを知ってか知らずか、吉川くんは不思議そうに僕を見つめた。しかしそれも一瞬のこと。またいつものにやりとした笑みを浮かべて話を続けた。 「でもちょっと意外。いいんちょ、頭良さそうだし、メガネだし、やっぱりムズカシイ本ばっか読んでいるのかなって思った」 「メガネは関係ないと思うけど……。難しい本って例えばどんなもの?」 「えー、参考書?」 「参考書は、まあ確かに読むけど、読書とは違うよ」 「じゃああれは。新書っていうんだっけ? かたくるしいことばかり語っているやつ」 「それは、たまに読むかな。でも僕は小説の方が多いよ」     
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