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「ーーじゃあ、この問題を……、神子さん、解いてみて」
「はい……」
数学の教師、肝原に名前を呼ばれた長い黒髪の女生徒が立ち上がり、教壇へ進んでいく。
虚ろな目付きの彼女はつい最近隣町から引っ越してきた転校生だ。
数か月前、その隣町でのこと。人口、2万人ほど町にあった唯一の高校は猟奇的殺人の舞台となり、彼女ーー神子露(かみこつゆ)たった一人が生き残った。
そして露の家族もまた何者かに惨殺された。
人口5万人ほどのこのS町にもその情報は瞬く間に広まった。
身寄りのいなかった彼女の身を案じ、この町に住む身寄りのいない女性が彼女を引き取った。
神子露はそこからこのS高校に通っている。
本来なら同情されて然るべきなのに女子を中心に露はイジメに遭っていた。
励まそうと何度話しかけてもあまり喋ることはなく、ただじっと露は一点を見つめていた。
あまり人の顔は見ず、遠くを見るような目。
初めは、露がショックから怯えているのだろうとか、トラウマを抱えたのだとか理解する向きもあったのだが、先生たちには割りと普通に話す素振りを見て、頭にくる女子か急増。
リーダー格のララの合図で今日も露はイジメられていた。
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