第1章

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授業中(いま)もそうだ。 教壇へ向かう途中に足を出した生徒に転ばされた。 もちろん、ララの命令だ。 派手に転んだ露に笑いが起こる。 「やだっ、ダサっ」 ララの腰巾着の鷺沼(さぎぬま)レイラが真っ先に声をあげる。 同時に男子から野太い歓声が挙がる。 倒れた露のミニスカートは巻くれあがっていたからだ。 「お宝ゲットっと……」 どさくさに紛れて露が倒れた後ろの席にいた江口ケントがスマホで露を撮影した。 男子が我先にと首を伸ばす。中には椅子に立つ者までいた。 「お前たち、いい加減にしろ!何やってんだ」 肝原は注意したが、それだけに留めた。 町長を親に持つララにはこの町に住む以上は肝原でも逆らえない。 「ふっ」 珍しく短く笑うと、露は立ち上がる。 ーーただ、その様子はオモチャ箱をひっくり返したような教室では誰も気づかない。 「肝原の奴、ガン見してやがんの」 「キモい野郎、さすがはロリコン」 ララと隣の席の杉浦モネが顔を見合わせて呟いた。 「止めなよ!静かにしなよ」 ポニーテールの髪を揺らして一人の女子生徒が立ち上がった。 多少短めのスカート丈だが、他の生徒よりは長く、標準服に近い真面目な感じのする女子だ。 名前は三条ルリ。別の町からS高校に通う生徒だ。
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