すべての星が燃え尽きるとき

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て自らの命を絶った。星を失ったことが命に関わることまでは、私の想像の埒外だった。  私は「星なし」のコミューンで生活し、裏町の喫茶店で働いていた。 なに、慣れてしまえば治安が悪いわけではない。薄汚れた街並みや劣悪な品々が日常としてあるだけで、不道徳を道徳だと信じてしまえば生きていくことができた。私には、むしり取られる星もないし、当然ながら財産もない。目を開けて一日を始め、再び目を閉じるまで活動するのだ。  店が開く昼少し前から、夜更けまで立ち通しで働く。常連客は私に声をかけ、私は適当にそれに応じる。 「昔、あたしはそれはきれいな星を持っていた」と嘆く人がいれば、同調して見せたが、基本的にはいつどんな形で星を失ったかは語らないのが暗黙のルールだった。  最初から希望がないというのも、案外気楽なものだ。  ある日、見慣れない若者が店に現れた。ひどく疲れた顔をしている。 「シチューをくれ」と若者が言ったので、私はすぐに厨房に取りに行った。この街の若者に多い、少々派手な服装をしていたが、時折見せる落ち着かない素振りから、私は彼が移住者なのではないかと推測した。そして、若者が口を開いたところで確信に変わった。 「君、何歳?」     
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