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序章 はじまり
今日は特別な日だ。
夢と希望に溢れる生き地獄を抜け出すのだから。
降るときは音もなく、重さも感じないほど軽やかな雪は、一度地に落ちれば地面に重く沈み、泥にまみれてゆっくりと消えてゆく。綺麗にみえていた雪は、手の届くところに降りてくるとその神性を失ってしまう。
私は、夢に手を伸ばし掴んだのだろうか。
それとも地に落ちたのだろうか。
暖かい日差しと未だ冷たい空気が混じり合う3月上旬。昨日、ここ一帯では珍しい大雪が降り、植え込みや日陰には重く湿った大量の雪が残っていた。ヒールの踵を慎重に地面に沈ませ、車と雪を避けるのに苦労しながら私は会社へと歩を進めた。
今の支社に来て2か月。研修扱いの出向で、会社から徒歩15分のホテルに滞在しているため、通勤はとても楽だがこんな日はめんどくさい。昨日早く帰ったせいで仕事が山積みだし、今週は納期が2つある。ため息をひとつこぼし、歩みを早めた
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