第6章 暗転

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第6章 暗転

目的の駅への到着を知らせるアナウンスが耳に響いた。 目を開けたら、意外と何も変化がなくてほっとした。自棄になっていても不安のほうが強かったのだとわかり少しつまらなかった。椅子から身体を起こし、そのままいつも通り会社へ向かった。 研修先の上司に面談終了の報告をして、席に戻った。隣の同期が今日は面談で不在なのが有難かった。こんな状態でも知らぬ顔で仕事を続ける自分はおかしいと思ったし、必要以上に人と話したくなかった。 1時間ほど経つと、頭がグラグラと揺れるような感覚を覚えた。吐き気をこらえトイレに向かう途中で同期の一人に声を掛けられたが、何も聞き取れなかった。 その後は仕事に手が付かないまま、定時になったので上司に退社を旨を伝え会社を出た。エントランスを抜ける際、後ろから呼び止められた。くらくらする頭を我慢して振り返ると、先輩が出てくるところだった。調子が悪そうだから気を付けて、と言ったようだった。笑顔で礼を言い、外に出てしばらく進み、角の物陰に隠れた。これ以上歩くものつらかった。
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