4/8

46人が本棚に入れています
本棚に追加
/136ページ
「えへへ~。うん、カワイイ~」  誠は後ろ頭に手を置いて、ほっぺたをリンゴ色に染める。  も~。誠ってどうしてこう、直球なんだろ?  あたしのほっぺたまで、熱くなっちゃう。  男子の制服は、紺色のブレザーと紺色のズボン。  小学校の教室では、いつも色あせたトレーナーを着ていた誠だから。ピリッと折り目のついたズボンに、のりのきいたブレザーを着ていると、なんか別人みたい。  短めの髪もあれ、ワックスをつけて立ててるのかな? 横に広がった大きな耳に、くりくりぱっちり二重の目。 「えへへ」って大きな口を横に開いた、脱力系の笑顔はあいかわらずだけど。 「誠だってカッコイイよ」  わりと本気で言ったんだけど。誠ってば、「わ~い! 和泉(いずみ)がお世辞言ってくれた~」って大はしゃぎ。それから、「くしゅん」って、くしゃみした。 「あれ? 誠も花粉症?」 「だよだよ~。毎年この時期は、ポケットテッシュが手ばなせないや。和泉も?」 「あたしは、今年から。サイアク~。頭重くって、体ダルイの~」 「オレ、鼻炎薬持ってきてるから、あげよっか? 熱は、ないよね?」  誠のしめった手のひらが、あたしのおでこにひんやり置かれる。 「うん~。熱はないみたい~」 「って、あんたら!」  真央ちゃんが、誠のわきをひじでつついた。 「朝っぱらから、なに、ナチュラルにスキンシップしてんの?」 「……え?」  頭のてっぺんでアホ毛をゆらして、あたし、まばたき。  あれ……? ホントだ。  誠っていつも、すごく自然にこういうことするんだよね……。 「あははは。ホントだ、オレ今、和泉にふつ~にさわっちゃった~!」 「ねえ、ふたりとも、それでホントにつきあってないの?」  有香ちゃんが、あたしの耳に口を近づけて、声をひそめた。 「……うん」  あたし、きょとん。  誠を見あげたら、ちょっとくちびるをとがらせて、足元のゆかを見つめてる。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加