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「えへへ~。うん、カワイイ~」
誠は後ろ頭に手を置いて、ほっぺたをリンゴ色に染める。
も~。誠ってどうしてこう、直球なんだろ?
あたしのほっぺたまで、熱くなっちゃう。
男子の制服は、紺色のブレザーと紺色のズボン。
小学校の教室では、いつも色あせたトレーナーを着ていた誠だから。ピリッと折り目のついたズボンに、のりのきいたブレザーを着ていると、なんか別人みたい。
短めの髪もあれ、ワックスをつけて立ててるのかな? 横に広がった大きな耳に、くりくりぱっちり二重の目。
「えへへ」って大きな口を横に開いた、脱力系の笑顔はあいかわらずだけど。
「誠だってカッコイイよ」
わりと本気で言ったんだけど。誠ってば、「わ~い! 和泉がお世辞言ってくれた~」って大はしゃぎ。それから、「くしゅん」って、くしゃみした。
「あれ? 誠も花粉症?」
「だよだよ~。毎年この時期は、ポケットテッシュが手ばなせないや。和泉も?」
「あたしは、今年から。サイアク~。頭重くって、体ダルイの~」
「オレ、鼻炎薬持ってきてるから、あげよっか? 熱は、ないよね?」
誠のしめった手のひらが、あたしのおでこにひんやり置かれる。
「うん~。熱はないみたい~」
「って、あんたら!」
真央ちゃんが、誠のわきをひじでつついた。
「朝っぱらから、なに、ナチュラルにスキンシップしてんの?」
「……え?」
頭のてっぺんでアホ毛をゆらして、あたし、まばたき。
あれ……? ホントだ。
誠っていつも、すごく自然にこういうことするんだよね……。
「あははは。ホントだ、オレ今、和泉にふつ~にさわっちゃった~!」
「ねえ、ふたりとも、それでホントにつきあってないの?」
有香ちゃんが、あたしの耳に口を近づけて、声をひそめた。
「……うん」
あたし、きょとん。
誠を見あげたら、ちょっとくちびるをとがらせて、足元のゆかを見つめてる。
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