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大岩は「たり~」とか言ってるし。リンちゃんはチョークをにぎったまんま、鈴木さんとテレビドラマの話をしてる。
左すみのあみだの空白欄に、あたし、小さく「和泉」って書いた。
チョークを置いたら、すぐ右で、だれかの右手もチョークを置いていた。
タイミングが重なっちゃったんだ。
あたしの手の甲と、その人の手の甲がコツンと軽くふれて、すぐにはなれる。
筋張ってて、硬い手。誠よりも大きな手。
ぎゅっと胸が痛んで、その場にしゃがみこんじゃいたくなった。
だって、あたし、あの手をにぎってたことある。
あったかいぬくもり、手はまだ、覚えてる。
「和泉ぃ」
誠に呼ばれて顔をあげた。
「席がとなりになると、いいな」
「えへへ~」って、照れくさそうな誠の笑顔。
「……うん」
よかった。誠のおかげで、胸の熱が冷めていく。
で。先生があみだくじの先に、ランダムに数字を書き込んで。
その数字の書かれた席に、自分のつくえとイスを持って移動することになった。
「げ~、サイアク。オレ一番前かよ?」とか「わ~い、窓際~」とか、明るい声がとびかってる。
あたしは、教室の真ん真ん中へ、自分のつくえとイスを運んで行った。
くじであたったあたしの席は、誠のななめ前、真央ちゃんの後ろ。
だけど、その場所についても、つくえをおろせないで、あたしはかたまった。
……横にヨウちゃんが、自分のつくえをおろしてる。
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