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……ウソ……。
胃がきゅ~としめつけられた。
ヤダ……。あたし、帰りたい……。
「和泉ぃ? もしかして自分の席、わかんない?」
誠があたしのかわりに、黒板の数字を確認してくれる。
その目が、あたしの席の横に座った後ろ姿を見て、それからあたしの顔にもどった。
「……しょうがないよ。くじ引きだもん」
誠の声にうなずくこともできなくて、あたしはとなりから間を開けて、自分のつくえをおろした。
ヨウちゃんの肩が、一瞬硬くなった気がする。
わかんない。だって、ちゃんと横を確認できない。
怖い。見たらダメ。直視したら、アウト。
ドッドッドッドって心臓の音が押し寄せてきて、自分の席に座っただけなのに、あたし、息もうまくつけない。
「はい、みんな座った? 一学期間は、この席ね~」
「せんせ~い」
ななめ後ろの席で、誠が手をあげた。
「オレ、葉児がジャマで、黒板見えない!」
……え?
瞬間的に顔をあげて、となりを見てた。
琥珀色の前髪をあげて、ヨウちゃんが後ろの席の誠をふり返っていた。
紺色のブレザーに紺色のズボン。
わ……やっぱり、おとなっぽい。
ヨウちゃんは、小学生のころから身長が百七十はあった。
たぶん今は、百七十五を越えている思う。細身ですらっとしていて、色白のあごはしゅっととがってて、鼻筋も通ってて。目は髪の毛と同じ琥珀色。
亡くなったお父さんがイギリス人だったから、ヨウちゃんはハーフ。
小学校のころから、「カッコイイ」「カッコイイ」って女子たちにもてまくってた。
胸がきゅ~っと痛くなって、泣きたくなってきて、あたし、石膏みたいにキレイなほっぺたを見つめた。
琥珀色の瞳が、こっちにスライドする。
あ……目が合う……。
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