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「真央、やめな!」
有香ちゃんが、イスから立ちあがる。
「けど、有香だって気づいてるだろ? 綾といっしょにいると、いつもあいつの視線を感じるんだよ。誠だって……言わないけど、気づいてる。綾だって、本当はわかってんだろっ あいつはまだ、綾のこと……」
「やめてっ!」
あたしの金切り声が教室にひびいた。
生徒たちの笑い声が、消える。
両耳を両手でおさえて、あたしは自分のつくえにちぢこまった。
「真央ちゃんのバカっ! ほっといてよっ!! 」
教室がざわついているのがわかる。みんなに注目されちゃってる。
どうしよう……ヨウちゃんにまで、気づかれちゃう……。
「真央。だから、やめろって言ったでしょ? 綾ちゃん、だいじょうぶ? ほら、部活見学に行く話しよ。綾ちゃんは、どの部に入りたいの?」
「ご、ごめん。綾……。うち、言いすぎた……」
あたしはぶんぶん、自分の髪を横にふった。
「……いいの。大声出してごめんね……」
なさけない……。
別れてからもう、二ヶ月もたつのに……。
あたし、いつまでもずっと、こんなんで。
まわりに、気をつかわせちゃって……。
「ここだよね? 一年の教室」
きき慣れない声が、教室にひびいた。
よく通るソプラノの声。
「あの子でしょ? 中条君って」
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