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「……行かなきゃダメですか?」  ヨウちゃんは眉間にしわを寄せて、後ろ首に手を置いた。  うわ……すっごいイヤがってる……。  教室のあちこちに、ムダに視線を向けたりして、だれかの救いを求めてるみたい。  ふっと琥珀色の瞳が、あたしを捕らえた。  あたしの呼吸は停止する。  ヨウちゃんが、真正面からあたしを見ている。 「葉児、さっさと行って来いよ。あいつら、うざくてたまんねぇんだけど」  大岩がヨウちゃんのわきをこづいた。  ヨウちゃんはハッとしたように、あたしから目をそらす。 「……ああ」  のろのろと教室から出ていくと、三人の先輩たちはキャーキャーはしゃいで受け入れた。 「ちょっとこっち。人にきかれないとこに来て」  文って呼ばれてる先輩が、ヨウちゃんの腕をつかんで、廊下へ引っ張っていく。  窓際の席で、リンちゃんがツインテールをかきあげた。 「なにあれ? メス丸出しで、ヤなカンジ。中条君がカッコイイことくらい、うちのクラスの女子なら全員わかってんですけど! バッカじゃないのっ!」 「全員って、うちらまで勝手に数に入れるなよ。ここに例外がふたりいるんだけど」  真央ちゃんがつっ込みを入れたけど、有香ちゃんはなにも言わなかった。眉をひそめて、ヨウちゃんが出て行った廊下の先を見ている。 「……綾ちゃん……。あれ、ちょっと覚悟しといた方がいいかも……。サイアクな事態を……」  ぐっと息を飲んだ。  サイアクな事態。 「いつか来る」って、わかってた。  ヨウちゃんと別れたときから、ずっと。
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