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 朝の教室は生徒たちの声でざわついている。  窓から差し込む白い日差し。  あたしは真ん真ん中の自分の席に座って、自分の手のひらを見つめてた。  虹色のバラのつぼみ。  そんなもの、目を開けたらどこにもなかった。  きのうの晩のアレは、やっぱりただの夢……?  だけど……虹色なのは……フェアリー・ドクターの魔力が宿っているあかし……。 「和泉ぃ、おはよ!」  となりから威勢のいい声がきこえて、顔をあげると誠だった。 「へへへ~。やっぱ、和泉のとなりの席って、うれし~や」  誠のほおに朝日があたってる。キラキラ笑うくりくりの二重。 「おはよ、誠」  あたしもにっこり笑い返したら、「綾……」って真央ちゃんがやってきた。  真央ちゃんは今、登校してきたところ。スクールバッグをあたしの前の、自分の席におろしながら、でも視線はずっと廊下に向けたまま。 「アレ……気にしないほうがいいからな」  真央ちゃんが、くいっと、親指で廊下を指し示す。 「……え?」  開いてる教室の前のドアの外を見て、あたし、息を飲んだ。  ヨウちゃんが、卯月先輩と話してる。  廊下の窓に背中でもたれて、卯月先輩と向かい合って。  卯月先輩はうつむいて、自分の口元に手を置いて、くすくす笑った。  そしたら、ヨウちゃんの口元もゆるんだ。  あ……笑ってる……。  男子たちと話してるときの、カラッとした笑顔とはちがう。目を細めたふんわりやさしいほほえみ。  ぎゅっと、胸をしめつけられた。 「綾?」  真央ちゃんがあたしの顔をのぞきこんでくる。  どうしよう……泣いちゃう……。
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