6/9
前へ
/136ページ
次へ
「うちはさ、正直、前から、中条より誠のが、綾には合うと思ってたよ。なんていうか、波長があってるみたいなさ~」 「うん。そんなこと、真央と前にも話してたね。綾ちゃんだって誠といるとラクって、よく言ってるじゃない。それって、人とつきあっていくうえで、大事なことだと思うよ」  有香ちゃんが黒縁メガネ越しに、あたしにほほえんでくれる。 「うわ~ん! 和泉のまわりがいい友だちばっかで、オレうれし~っ!」  誠ったら、腕で目を隠して、天井見あげて、ウソ泣きの号泣。  なんだかコントを見てるみたいで、おかしくなった。 「あ! 綾ちゃんが笑ってる!」  有香ちゃんが、つくえに手をついてさけんだ。 「綾、笑え、笑え~」って、真央ちゃんは、あたしのわきの下をくすぐってくる。 「きゃ~」って悲鳴をあげながら、あたし、ケラケラ笑ってた。  だけど、廊下から帰ってきた男子が、誠の席の後ろに座ったとたん、あたし、かたまっちゃった。  ヨウちゃんは、はしゃいでいる前の席を無視して、自分のつくえの中から教科書を取り出している。  真央ちゃんが、あたしをくすぐるのをやめた。有香ちゃんも誠も、息をとめてる。 「……ね。そろそろ、あたしたちも授業の準備しよう」  あたしがつぶやくと、有香ちゃんがうなずいた。 「そうだね。わたし、自分の席に帰るよ」  真央ちゃんも自分のつくえに向き直る。 「ど~しよ、オレ、次の数学、出席番号順で、ぜったいあてられるんだよね~。和泉ぃ、宿題の答え合わせしない~?」 「うん、いいよ~。でもたぶん、あたしもまちがってるよ?」  となりの席同士で、誠と頭をくっつけて、宿題の見せ合いっこ。「ここちがう」とか「和泉のほうが、合ってない?」とかくすくすやってたら、後ろから、ずっと鼻をすする音がきこえてきた。  ……あ……ヨウちゃんも花粉症かな……?  あたしのバカ。  気にしないようにしてるのに。  あたしはそっと、自分の手のひらを開けてみた。  虹色のバラのつぼみ……。  あれは本当にただの夢?
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加