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「綾、本当にきょうもうちらと部活見学行かないの?」
眉をひそめた真央ちゃんに、あたしはうなずいた。
「うん。あたし、放課後、用事があるから」
「……そっか。ひとりで落ち込むとかじゃないなら、わたしたちはいいんだけど……」
有香ちゃんが不安げに、あごにこぶしをそえてる。
今は、友だちのやさしさが身に染みる。
「そんなんじゃないよ。本当に用事だって。だから、気にしないで! じゃあ、あしたね」
にっこり笑って、ふたりに大きく手をふって、昇降口にかけおりて。
ひとりになったとたんに、ほっぺたの筋肉の力が抜けて、あたし、足元を見る。
放課後の中学の校庭は、部活動をする生徒たちであふれてる。
グランドを走る、サッカー部員。砂場で走り幅跳びをしている、陸上部員。野球場からのかけ声は野球部員。
真央ちゃんと有香ちゃんは、きょうは吹奏楽部の見学に行くって言っていた。誠はサッカー部に入部を決めたみたい。
だけど、あたしはきょうもひとりで、校門をくぐり抜けた。
大通りに出て、道を左に。うちとは反対方向へ。
胸がぐらぐらゆれていて、本当はぜんぜん落ちつかない。
一歩、一歩、踏みだすたびに「いいのかな?」ってまよっている自分がいる。
だけど、足は覚えてる。
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