46人が本棚に入れています
本棚に追加
「ね、もしかして、綾ちゃんっ!? 」
ハッと顔をあげると、アーチの奥、ハーブガーデンの先で、玄関のドアが開いていた。
中から、白いひらひらのエプロンをつけた小柄な女の人が走り出てくる。
「……お母さん……」
あたしを見ると、ヨウちゃんのお母さんは泣きそうに眉尻をさげ、ほっぺたにエクボをつくって笑った。
「綾ちゃん~……。会いたかったわ~っ! どうしたの? 葉児に用事?」
「あ……い、いえ! ち、ちがいますっ! あたし、たまたま、ここを通りかかっただけで……。か、帰りますっ!」
「そんな。ちょっとくらい、うちでお茶していかない? もちろん、サービスよ。だって、ひさしぶりじゃない。ね? 葉児が帰ってくるまで。いいでしょ?」
お母さんって、こんなに押しの強い人だったっけ?
「あの……でも……」
「綾ちゃん、教えてほしいの。葉児がなんにも話してくれないから。やっぱり、あのときのことで、綾ちゃん、ご両親にうちに来るのをとめられちゃった?」
……あ……。
あたしは立ちすくんだ。
あたしとヨウちゃんが別れた理由。お母さんは、うちの親が反対したからだと思ってるんだ……。
「ちがいます。そうじゃないんです……。あたし……ヨウちゃんと約束したんです……」
最初のコメントを投稿しよう!