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 校庭の桜の花が散っている。  外は春のあたたかい陽気に包まれているのに、あたしは花粉症でくしゃみばっかり。 「(あや)ちゃん、おはよ~」  ふり向くと、有香(ありか)ちゃんが教室に入ってきていた。有香ちゃんのとなりで、真央(まお)ちゃんも手をあげる。 「オッス、綾! って、何度見ても、綾の制服姿、笑えるんだけど。なんていうか、服のオバケ?」  お腹を抱えて笑う真央ちゃん。真央ちゃんて、男言葉をつかうし、態度も男みたいなんだけど、ほっぺたはふくふくで、とっても女の子。天然パーマのショートの髪が、ふわふわゆれてる。  も~。しつれいっ!  あたしは自分の紺色のブレザーのそでぐちを、ぎゅっとまくしあげた。だけどすぐに、そでは元どおり、だらんとのびて、手の甲が隠れちゃう。  小さなあたしの身長に、中学の制服は大きすぎる。ブレザーの肩幅は広すぎだし、紺色のブリーツスカートも、長すぎ。 「いいんだよ、綾ちゃん。綾ちゃんの制服姿、萌えるよ~。その新鮮さがたまんないっ!! 」  有香ちゃんが、黒縁メガネの奥で、切れ長の目を細めた。  え~? 有香ちゃんだって、あたしとおんなじピカピカの中学一年生なのに~。  だけど、有香ちゃんの制服姿はサマになってる。  二つに分けて胸の前でたらした、黒いつやつやの髪。長くて細い手足で、背筋をのばして。シャキっとしてるから、もう、生徒を通り越して、インテリのオネエサマ先生みたい。  真央ちゃんだって、入学してまだ一週間なのに、スカート短め。カブみたいに白い太ももがむき出しだし、学校指定のリボンをはずして、ワイシャツの胸元を、広めに開けてる。中に青いタンクトップを着てなかったら、大きな胸の谷間が見えちゃうよ! 「ね、(まこと)も。綾ちゃんの制服姿、カワイイって思うでしょ?」  有香ちゃんが、後ろから教室に入ってきた誠を呼びとめた。
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