教授だって人間だ、その3 教授がケガした驚愕の原因とは?

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教授だって人間だ、その3 教授がケガした驚愕の原因とは?

 医者になって3年目、私は教授外来で見習いをしていた。 教授になると自分でカルテを書かなくてもよい権利を獲得する。 これだけでも教授がいかに偉いかがわかる。よって教授の傍らには、勉強を兼ねて若手のドクターが記録係・書記係として同席する。これが陪診〈ばいしん〉だ。ベシュライバーともいう。私は教授のベシュライバーを一年ほど務めた。ベシュライバーについては、また折を見て触れたいと思う。  私がお仕えした教授は、何事にもキチンとした先生だった。 出勤時間もキチンとして遅刻はなく、靴はいつもきれいに磨かれていた。服装もキチンとしていた。医者なのにゴルフもせず、車もお持ちではなかった。そして手術は丁寧でプロフェッショナルだった。正月の当直は誰もがやりたがらないものだが、若い頃から率先して当直したという。なぜなら「世の中がこんなに静かなときこそ、ゆっくり医学書を読みたい」という理由からだった。電車内でのトラブルでは喧嘩しないよう医局員に注意した。「君子は危うきに近寄らず」だよと。  そのくらい真面目だったから、決してバカな真似はしない教授だった。ある日のこと。
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