後編

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マーゴットは今、国境の町の宿屋に一人でいた。伯爵令嬢とは思えない町娘が着るような質素なワンピースを纏い、必要以上に人と関わることをせず、一人部屋にこもる日々だった。  宿も安宿だった。壁が薄いのか隣の物音が嫌でも聞こえてくる。部屋の天井隅には埃の被った蜘蛛の巣がうっすらと存在を主張していた。女が一人このような場所にいることなど、襲ってくださいと言っているようなものだった。しかし、その危険はぜったいといっていいほどない。マーゴットはとある人物に守られているからだ。 パーティで倒れたマーゴットが目を覚めると、()家族にあらん限りの悪口雑言を並べられた。数度殴られ、サビくさい味が口の中に広がった。そして、パーティで宣言されたように、マーゴットは着の身着のままトルーソン家を追い出された。
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