後編

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「ドリュー! ご、ごめんなさい」 「……っ、いや、君が受けた痛みに比べれば……」  マーゴットはよほど強く噛んでしまったのか。ブラッドルーの口の端から赤が流れ落ちる。それを目に留めたマーゴットは、ブラッドルーの手が赤を拭う前に唇を寄せる。流れた血を掬いとるようにマーゴットはブラッドルーの血を舐めとる。 「、まりー」  この国で血は不浄をあらわす。特に女性は、月のものの時は他人との関わりを最低限にする必要があるほどだった。また逆も然り。異性の血液に触れることは、医師を除きほぼ禁忌だった。例外はただ一つ、伴侶になるものだけが許されていた。 「ドリュー……愛してるの」  ブラッドルーの血で染められた小さな舌が見え隠れする。赤で染められた舌がブラッドルーを誘う。愛しい人物のものであれば、全てが愛しい。マーゴットの一言に、ドリューの枷が外れた。 「マリー! マリー!」  すぐ側に簡易的とはいえ、ベッドがある。けれども、ブラッドルーはそれすらも惜しいとばかりに、マーゴットを床に押し倒した。  マーゴットの簡素なワンピースが引き裂かれる。ビッ、ビリリッと布の裂ける高い音が部屋に響いた。  下着などほとんど身につけていないマーゴットの裸体が、小汚い床の上で顕になった。青紫の大きなあざが、腹部と大腿部、二箇所にあった。
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