【蝸牛】黒須賀 恵菜 (くろすか えな)

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何も手入れしていないにも関わらず つま先から髪の先まで キレイに整っている…… そんな仕上がりを 恵菜は常に心がけていた。 いかにも手を加えていると 周りが気付く仕上がりではダメだ。 外見だけではいけない。 身なりに気を取られて 成績が悪いのは一番無様。 だから恵菜はそれなりの成績も キープし続けた。 高校生になると恵菜は 下品にならない程度に 色も加えるようになった。 全体の色味さえちゃんと 計算に入れれば それ程違和感なく仕上がり 美しい肌を引き立たせる事ができた。 この年頃になると小動物達は 「恋だ愛だ」と騒ぎ出して 少しだけ進化する。 クロマニヨン人位か ……かなり人間に近くなってきた。 大学に入る頃には 恵菜と小動物との違いは あまり感じられなくなっていた。 特にやりたい事を 見つけられなかった恵菜は 大学を卒業すると親に勧められるまま 商社の受付で働いた。 そして何も考えずに給料のほとんどを 服や化粧品に消費するようになる。 仕事も覚え後輩が入って来る頃には まるで新人と入れ替わるように 同期が1人、又1人と 寿退社していって……。 当たり前だと思っていた 男性社員からのお誘いも いつの間にかほとんど無くなった。 たいして仕事ができない後輩が 受付カウンターの座に収まり、 恵菜はカウンターの後ろで 地味な事務仕事や 雑用をまかされるようになっていた。
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