【蝸牛】黒須賀 恵菜 (くろすか えな)

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恵菜は思う。 皮膚というのは人間と同じだ。 飢えた状態で食べ物を食べると 美味しいと感じられるのに、 満ち足りた状態ではご馳走を食べても 美味しいと感じなくなってくる。 化粧品も同じで より贅沢なものでないと 効き目が感じられなくなってくる 。 恵菜の肌は高額な化粧品の上を 疲れ切った蝶のように 次から次へと渡り歩いた。 気付くと恵菜は給料のほぼ全額を 化粧品に注ぎ込んでいた。 それなのに肌も心も どんどん疲弊していった。 ところが……。 化粧品の効果を比較したり 肌の変化を把握する為に 【黒百合】という名で始めた SNSに知らない人達から 予想外の反響があった。 それだけではない。 フォロワーが3000人を 超え始めたあたりから ある変化が起こった。 最初、インスタグラムの写真に 是非我が社の商品を載せて欲しいと いうオファーが来始めた。 それから化粧品メーカーから 新商品のモニターを依頼されたり 何社からも試供品を送らせて欲しいと 連絡も来た。 その後、顔は出さないという約束の元 雑誌の特集を組まれた事もあった。 恵菜がSNSを更新するたび リアルタイムでコメントは増え続け ついでに始めたアフェリエイトでの 収入もいつしかそれなりに 入るようになっていった。 興味あるものを突き詰める事で 多くの人からの反響を肌で感じて ついでにお金も入る。 情報の更新に恵菜は 徐々にのめり込んでいった。 コメントに一喜一憂した。 美肌を追求する事は 誰かに認められる事だと 恵菜は確信していった。
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