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男の子はにっこり笑って言った。
「すごく落ち込んでいるみたいだから気づかれないかと思いました。」
きっと歩きながらいつの間にか自分の世界に入り込んでしまっていたんだろう。
「大丈夫ですか?」
優しい言葉にほろりとしてしまう。
思わず手で口元を抑えた。
あれ、そう言えば...今日の占いって...
「気分悪いんですか?どこかに座ります?」
「あ...あの!よかったら...」
******
「そうなんですか?私もですよ!すごい偶然ですね!」
彼女はさっきとはうってかわって楽しそうにしている。
話すたびに、自分の趣味や好きなことが僕と全く一緒であることに運命を感じているようだ。
そんなの当然じゃないか。
僕は君のことなら何でも知ってるよ。
占いを信じなかったことも、ケータイを変えたことも、カフェで働いてることも、部屋の鍵をよくかけ忘れていることも。
彼女は人を疑うことを知らないのだ。
エレベーターの故障。
イベントの情報。
懸賞にみせかけたプレゼント。
盗んでおいたハンカチ。
職場の彼への脅迫電話。
「どうしたんですか?」
彼女に問いかけられて僕は占いの「作成」画面を閉じた。
純粋で愛らしい彼女に僕は愛情を込めて微笑みかける。
「今日の僕は恋愛運最高だって」
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