異世界召喚

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異世界召喚

 赤く燃え盛る炎、それを食い止めようとする水の音、その水が岩に当たって弾ける音、男女の叫び声、地を揺らす怪物の遠吠え。そんな混沌とした場所でうつ伏せになっている俺。  どうしてここにいるのか思い出せない。生きている感じがしない。何が起きているのかも理解できない。  土か砂かわからない味がする。左腕の感覚が無く、体のいたるところに切り傷があるようで、ヒリヒリする。つい数秒前にここに来たはずなのに、一瞬のうちにここまでボロボロになるほど修羅場なのだ。そもそもなぜここへ来てしまったのか――。 「君、控えめに言って使えないね。まぁ、いないよりはマシだから置いておくが、給料下げていいよね」 「そ、それは困ります。妻が今、身ごもっていて、まともに動ける状態でもないので、私の給料だけが頼りなんです。明日から頑張りますので、お願いします!」  俺は一所懸命頭を下げ、周りから冷たい目線を向けられた、いつかの記憶が脳裏を駆け巡る。 「おいおい、この程度(・・・・)で許してもらおうと思ってる?」 「......」     
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