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「優子、久しぶり」
「誠司・・・・・・久しぶり」
「なんか・・・・・・きれいになったな」
しばらくぶりで少しぎこちない空気を感じながらも、いつものように会話を交わそうと話し始めた私に、これまでとは違う誠司の言葉が届いた。
思ってもいなかった誠司の言葉は、先程まで冷たかった私の頬を熱くした。
私は照れ隠しのように持って来た紙袋を彼に差し出す。
「これ、良かったら・・・・・」
昔から紡いできた時間と思いを慈しむように作ったチョコレート。
子供の時はそれほど特別なこととは思わずに彼にチョコレートをあげていた。
私はお菓子づくりが楽しくて、彼は甘い物が好きで。
家族以外の人に手作りのものを食べてもらって『おいしい』と言われるのが単純に嬉しくて、趣味になったお菓子づくり。
その延長でいつの頃からか彼にバレンタインチョコレートを渡すようになった。
そして、彼からのホワイトデーのお返しは、私が好きなドロップだった。
そんな淡い思い出が蘇る。
それすらも今の私にとっては大切な思い出。
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