122人が本棚に入れています
本棚に追加
「平馬くん、この間の企画上に凄く好評だったわよ」
先日移動になってやって来たばかりのチーフ。
彼女がするりと細長い指を彼の肩に置く。
多分、一昨日もあれに似た光景を見たせいだ。
だから、あの夜はあんな夢を見たのだ……。
彼との夢を見始めてからの初めてのケンカ。
私の嫉妬心で始まって、私の家出で終った夢。
……あんな、終わり方。
喧嘩をして、私は彼の家を出ていった。
泣きながら夜の街をさ迷い、そこで目が覚めた。
目覚めた時泣いていた私は、まだ夢の中にいるのかと混乱したくらいだ。
意識がはっきりと覚醒してからも、モヤモヤだけが心を満たす。
本当の恋人でもないのに。
夢の中で恋人だった人と、夢の中でケンカしたというだけ。
それなのに……何故。
昨日は一日中切なさに溜め息が途切れなかった。
最初のコメントを投稿しよう!