第1章 太陽系第3惑星

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第1章 太陽系第3惑星

朝、久しぶりにじっくりと彫りの深い自分の顔を見ていた事を思いだし… 「顎髭に白髪が混じって目立つな…」 顎を撫でながら一人苦笑しているとブラックアウトしていた全面立体ディスプレイモニターが何層にも点灯し静かに機体のエンジン音がシートから伝わって来ていた。 「ガノー隊長!出撃よろしいですか?」二十歳すぎとは思えないほど相変わらずの甘ったるい声で、オペレーターのハンナ・スフィアはヨシュア・ガノーに出撃を促すとサイドポケットに入っている細長いペンシル状の物を取り出してくわえ、軽く吸い込むと満足げにまたポケットへとしまった。どうやらミント系の吸引タブレットの様だ。 「隊長!リミッターロックOKです!」ガノーの右サイドディスプレイに幼い風貌だが目鼻立ちが鋭い青年がハッキリとした口調でガノーへ報告すると静かに微笑んでディスプレイを閉じた。 「了解!キアッカ!制御頼む!」ガノーはワルター・キアッカに答えると背筋を伸ばしてストレッチしながら伸ばした左手で左上部の立体モニターのコンソールを叩くと、こわもてだが口元が優しそうな男が映った。 「ゴリム、朝からすまんな…調整間に合うか?」ガノーがそう言うとゴリム・ザッカリーは顔つきからは想像できない高い声で質問を返した。 「隊長~!ルシファ粒子弾か実体弾どっちにしましょうかね~?」機体の出力ゲージを確認しながら「今日は偵察任務だ…軽い方でいいよ」ガノーは答えた。 突然、正面モニターに少年の顔が飛び込んできた。「隊長!起こしてって言ったじゃん!」良く日に焼けた顔で少年はむくれて見せた。 「昨日も言っただろう…ガネーシア、目覚ましを耳に当てて寝ろって!」ガノーが悪戯っぽく言うとガネーシア・ロアは「カチコチうるさくて眠れなかったよ!」と言って拗ねた。「アンティークを使うとはな」拗ねたガネーシアの顔を見ながらガノーは笑うのを堪えた。 直径18キロメートルを超えるクライスト級大型人類母艦一番艦「ガイア」地球と月の間のラグランジュポイントで、まるで雲の上に静止しているように見えていた。宇宙空間移動用の高圧縮ガスフィールドを解除した時にだけ観られる光景だ。「ガイア」は人類が巣立ち無人と化した「筈」の母なる星の状況確認をするために実に700年以上ぶりに帰還していた… 「何時からまた(人類?)が活動しているのだ?」機密機関G9のクライバン・ジェリスは誰に言うでもなくそう言った…
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