第3章 人類母艦

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第3章 人類母艦

艦の旅立ちはかなり慌ただしかった。地球上での人間同士の最終戦争が終結し、「地球統合連盟」が誕生して丁度、50年目の節目に当たっていた。 「地球統合歴50年に、この人類の母艦となる一番艦ガイアは母なる地球を旅立ち、必ずや第二の地球を見つけ出し次の世代の理想郷を作り上げるものと信じます。」 地球統合連盟二代目首相デイン・フォイダは高齢で細身の体躯からとは思えないほど力強く語った。 艦のデザインは、ほぼ円形で中央に重力制御と機関部を置き、その周囲を囲むように機密機関区画、軍事機関区画、生活圏区画、外縁装甲区画を置いた。人工の小型の惑星と例えれば分かりやすい。 「二番艦ヒロナガ、三番艦ナンパオ、四番艦シュヴァリエ、五番艦ヘヴンアイランドまでの出航スケジュールはおおよそまとまりました。」 事務方のトップだった、ユーシン・ベルニットはキツくまとめた長い髪とタイトなグレーのスーツに少し息苦しさを感じながら忙しそうに手のもとのディスプレイ型キーボードを叩きスケジュールを話しながら、ユーシンの右サイドにそびえ立ち石像の様に立ちつくして動かない、運輸大臣ゲイラ・マルケアニに報告していた。 「置き去りは無しだ…ベルニット君」ゲイラは低くかすれた声で当然の如くユーシンに念を押した。 「しかし、登録されていない人々を見つけ出すのは困難です…」ユーシンは自信なさげに言った。 「置き去り無しだ…ベルニット君」ゲイラは低くかすれた声で当然の如くユーシンに念を押した。ユーシンはひきつった顔を隠しながら、横目で運輸大臣を見上げた。 人類母艦は地球の衛星軌道上で各艦ごとに建造されていた。各艦共に建造の遅れは多少なりともあったものの順調に進んでいた。建造責任者のマイオット・パルドマンはそれぞれの母艦の組み立て確認をするために小型シャトル移動が日課になり、毎年、衛星軌道上外縁で行われていた宇宙のF1となりつつある「スピードシャトルレース」に出られるのではないかと思うほど、小型シャトルに精通して行く我が身を呪った。 「今度、俺の母国のカラーに塗り替えようかな?」マイオットは自分が操縦しているシャトルをくさすように呟き、次の母艦の組み立て確認へと向かっていった。 クライスト級大型人類母艦一番艦「ガイア」が出航すると慌ただしく半年ごとに各母艦が出航して行った。
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