黄昏

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彼女の言葉がどういう意味なのか、直ぐに理解できた。今度は携帯を彼女に向け、写真を撮る。なんとも間抜けなシャッター音で彼女は我に返ったようだ。 「ちょ、ちょっと何勝手に撮ってんのよ!変態!」 変態とは失礼な。おっと、こういうのは反応しちゃいけない。 撮った写真を確認し、確信を得る。……やっぱりそうなんだな。 「撮るなら撮るって言ってよね、髪もくしゃくしゃのままだし……ったく」 そんなこと気にする必要ないのに。 「で、いい感じに撮れたの?見せなさいよ」 見せたくはなかったが、画面を切り替えるよりも早く彼女が携帯を覗きこんでしまった。 誰も映っていない写真を見て、彼女は少しの間硬直していた。小さな携帯の画面を隅から隅まで舐めまわすように見ても、『誰一人として』そこには映ってはいなかった。 そういうことだ。見えないものが見えてしまう、幽霊とかそういった類のものを。彼女みたいに生身の人間と間違えてしまうくらいにはっきりと。 彼女は糸の切れた操り人形のように地面に座り込む。気の毒だが、お互いに関わらない方がいい。文字通り、住む世界が違うのだから。 携帯をしまって、自転車のハンドルを握る。早々に立ち去ってこのことは忘れよう。念のため、ここを通るのはしばらく避けて。 「……ま、待ちなさいよ。ちょっとは話くらい」 あーあー。何も聞こえない。何も見えない。 「私何がなんだか理解できてないから説明くらいしてくれても!」 さーて、帰ったらゲームの続きでもするかな。あのダンジョンの取り残した宝箱回収しないとだしな。 「……家まで憑いていくわよ」 「おいやめろ」 ……しまった。
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