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2日目side:A
…ちゃん、
…りちゃん、
灯里ちゃん!
「わっ」
孝太の声がすぐ近くで聞こえて、はっと目を覚ました。部屋には朝日が差し込んでいる。
「おはよう、灯里ちゃん。起こしてごめんね」
「おはよう…どこかへ行くの?」
孝太は外に出る格好をしている。
「うん。仕事があるから」
「孝太は何の仕事をしているの?」
「大学の先生だよ。心理学を勉強しているんだ」
「心理学って、あの…テレパシーみたいな?」
「ええっ?そんな非科学的な」
孝太は声を出して笑っている。何が面白いのかよくわからない。
「孝太が仕事に行くなら、わたしも外で散歩でもしようかな」
起き上がろうとすると、孝太に止められた。
「だめ。記憶がないんだから、1人で外出したら、戻ってこれないかもしれないよ?」
「大丈夫よ。それに、外に行くことで記憶が蘇るかもしれないわ」
行ったことがある場所を訪れることで、そこでの記憶が蘇るなんてこともありそうだ。しかし孝太は首を横に振った。
「だめだよ。外出するなら、俺がついていけるときにして」
「んー…わかったわ」
そんなに言うなら仕方ない。今日は諦めよう。なんなら自分の持ち物を探しがてら掃除でもして、部屋を綺麗にして孝太の帰りを待つのもいいかも。
わたしはにっこり笑って手を振った。
「いってらっしゃい、孝太」
「ありがとう。行ってくるね。食べ物は冷蔵庫の中にあるから」
孝太は出かけてしまった。
…よし。部屋の探索をするぞ。わたしの記憶を探すんだ。
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