第5話 魔女の醜悪

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   焼き鳥屋さんの前で別れた時、家門さんはわたしと同じように仕事終わりそのままだったからスーツの上にコートを着ていた。  けれど今、ロビーの前にいる彼はスウェット姿にコートを羽織っているだけ。  それが意味することが過り、思わずバッグを取り落としそうになってしまった。 「家門……さん」  今一番顔を見たくない相手だった。  瞼の奥の奥が、ちりちりと刺すような熱さを持ち始める。  まさか一晩中ここにいたんですか、と。  喉の奥で言葉が何度も渋滞を起こし、吐きそうになる。  彼はわたしを上から下まで凝視し、はぁと溜め息をついた。 「……眠れたんか」  抑揚のない声に、びくりと身をすくめる。  こんな冷たいこの人の声を、初めて聴いた。 .
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