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世界の資源が尽き始めた二十一世紀末、日本は都市鉱山の本格的な開拓に乗り出す。都市鉱山というのは、電化製品など、都市部で多く排出されるリサイクル可能なゴミの山のことである。レアメタルと呼ばれる希少金属が多く使用される携帯電話やパソコンなどの精密機器もさることながら、価格が高騰し輸入困難となった鉄や銅などが大量に使用されている家電などは、いわば資源の宝庫。埋め立てゴミとしていた粗大ゴミや大量の廃車の中から、それぞれの金属を取り出して資源に変えていくのだ。
生産と消費を繰り返し成長してきた日本経済、都市鉱山の埋蔵量は年々膨れ上がった。金や銀、インジウムや錫、タンタルなどは、世界の現有埋蔵量の二割を超え、その高い技術により再生成されたレアメタルは貴重な輸出資源へと変化していた。また、積極的に日本の中古家電を買い取っていたアジアの各国も、日本の技術力を取り入れようとしたが断念、結果、一度輸出された中古家電を再輸入するという歪曲現象が生じたのである。
金属再生工業という新しい産業が発生し、ゴミの埋立地から家電を回収、分解して種類ごとに再生工場に持ち込むと、その純度や量に応じて報酬を払う制度が確立された。
この「金属資源再生制度」を、流の所属する便利屋一ノ瀬が見逃すはずがない。暑い暑いと文句たらたらに作業を続ける流に、一ノ瀬は涼しげな顔で遠くから手を振った。
「流ぇ! サボったら報酬カットだぞ! 真面目にやれ!」
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