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美伽の顔は曇っていた。それは過去の話をする時に決まって見せる表情だった。
僕たちは農工大学の脇を通り右に折れて東小金井駅についた、時間は午後二時。ホームで電車を待っている二人の前を、中央特快が通過して行く。隣をみると、さっきの続きで美伽は浮かない顔をしていた。
「関根、どうしたの? さっきから浮かない顔して?」
「ううん、何でもない。それより、向こうに着いても三時でしょ、暗くなるまで西武園に行ってほしい……な」
「西武園ゆうえんち、に行くってこと?」
美伽と遊園地になんて行ったことも無く、今までそういう所に行きたいと聞いたことも無かった。それに三時から入場してもそんなに遊べる訳でもない。
「三時から入っても、そんなに遊べないけど、それでもいいのか?」
「やっぱり、ダメだよね……」
あまりにも美伽が落胆しそうなので僕は慌てた。
「いいよ別に、関根が良ければ、俺はそんなに気にしないからさ」
「ホント、ありがとう! 私、遊園地ってあんまり行ったことないんだ」
「ふ~ん、家族では行かないの?」
「お父さんがあんまり好きじゃないの、それからお母さんはお買い物の方が好きだし。遊園地って、お姉ちゃんと行ったくらいかな」
美伽の家は四人家族、お姉さんは大学に行って一人暮らしをしている。
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