二人の距離

6/8
前へ
/111ページ
次へ
「そうか、俺もあんまり行ったことないなあ。兄弟いないし、共働きだし」 「領家くんは一人っ子だもんね、やっぱり兄弟って欲しかった?」  兄弟が欲しいと思ったこともある。でも兄弟のいる生活をしたことが無いので、ウチの中に兄弟がいる現実感が分からない。 「分からないな。弟や妹がいたら可愛がるかもしれないけど、兄や姉がいるのはちょっと想像がつかない」 「上の兄弟がいるとね、比較されるよ~。お姉ちゃんはこうだったとか……、嫌になることもある。私も妹が欲しかったな、それじゃなかったら一人っ子でもよかったかな」  僕のことを羨ましそうに見つめる美伽の向こう側から、オレンジ色の電車が滑り込んできた。  土曜の昼ということで電車の座席は空いている。僕たちはロングシートに並んで座り、美伽はハレー彗星の特集誌をリュックから取り出した。 「夕方から西の空に見え始めるって書いてあるけど、でも本当に見えるのかな?」 「えー!? ちょっと、これ関根が言い始めたんだよ。俺なんかハレー彗星のことなんて何も知らないぞ」 「そうじゃなくて空が曇ってたら見えないでしょ、それに見つけられるかどうか分からないし」 「ああ、そういや関根は目が悪かったな」     
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加