二人の距離

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「なるほどな、俺はまったくの無趣味だから関根が羨ましいよ」  本当に僕は無趣味だといってよかった。スポーツもマンガも音楽も、人並み程度の興味しかない。部活は強制加入だから一番人の多いテニス部に入っているけれど、大した熱意も無く続けている。 「私は領家くんが羨ましいよ。友達も多いし、何でも話せるし、一人っ子だし」 「そういう関根は頭いいし、家は裕福っぽいし、俺はそれが羨ましいけどな」 「そんなことないよ……、でもお互いうまくいかないね」  萩山駅で乗り換えて再び電車に乗る、これで乗り換えは最後だ。 「着いたら三時前だ、少し早くついてよかったな」 「うん、ごめんね我儘言って」  美伽はうつむきながら謝る。  何も悪いことをしてる訳じゃないのに、と僕は心の中で思う。  やがて電車は左手に狭山公園を見ながら、西武遊園地駅に到着した。北口を出て階段を登ると西武ゆうえんちの中央口。そこで入場料を払い園内に入ると、土曜日の午後だといっても寒い一月の園内は人もまばらだった
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