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「ウソだあ! それで一気にウソくさくなったよ。やっぱり関根の情報網はちょっとズレてるって」
僕はわざとふざけた声を出し、早くこの話題を終わらせたかった。しかし今日の美伽はすこし違う。
「ホントだよ、例えば、工藤さんとか」
「工藤って、あの工藤……朋子だっけ?」
「そう、朋子ちゃん」
「えー、そうなんだ……、うん、これでウソだと確信した」
美伽が言っている工藤朋子は活発な女の子。背が高くてバレーボールをしていて、話はするけどそこまで親密でもない。
「何で! だって朋子ちゃんは領家くんが他の男の子と違ってちょっと冷めてるところがいい、って言ってたよ」
「ああ、熱くならないところね。それは人気があるんじゃなくて、何言っても怒らない意気地なし、って言ってるようなもんだよ」
「違うって! もう……」
すっかり美伽は拗ねてしまった。今までも拗ねたことはあった、でも今は本当に拗ねているようだった。
「ゴメン、悪かったよ。温かいものでも奢るから機嫌直して」
「そういう冷静なところが、朋子ちゃんは好きなんだと思う」
そう言って、美伽はフードコーナーへ歩き始めた。まいった、今日はちょっと感じが違うな、と思いながら僕は彼女の後をついていった。
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