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美伽の家は裕福なようでいつもいい服を着ていた。それもクラスの女子には気に食わないらしく、いじめとは言わないまでも馴染めていないようだった。
そうして一年が経ち六年生になっても、いるのか、いないのか、分からないような少女。それが関根美伽だった。
僕は中学に上がる時に、彼女は私立に行くものだと思いこんでいた。過去の卒業生も勉強の出来る子や裕福な家庭の子は私立中学に行っていた。だから同じ公立中学に行くと聞いた時には少し驚いた。
☆ ☆ ☆
僕がアパートに着くと美伽は入り口で待っていた。自分は一回部屋に帰ったようで、学校の荷物は持っていなかった。
「遅くなってごめん。で、用事ってなに?」
美伽がここに来てからの三年間、僕は彼女に対しては親切に接してきたつもりだった。ずっと同じクラスだったし、一緒に映画に行ったりもした。出来るだけ話し相手になったり、落ち込んでいる彼女を励ましたりもした。ただ、それを付き合っているのかと問われると、何か違う感じがしたし、好きかと言われると、心配とか同情とかという気持ちの方が強かった。
「うん、あのね領家くん。今度……ハレー彗星見にいかない?」
「ハレー彗星?」
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