関根美伽

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 美伽の口からハレー彗星が出て来るのも不思議ではなかった。彼女は星の話が大好きで、よく話を聞かされていた。彼女の部屋には天球儀や星図の本があって、僕にはさっぱり分からない話を熱心に喋っていた。 「ああ、いいけど。でも今回のハレー彗星ってこの辺じゃ見えにくいんだろ? テレビでやってたよ」  残念ながら今回のハレー彗星は北半球では見えづらいらしい。天文ファンの一部の人は観測しやすい南半球に行くとかやっていた。 「うん、そうなの。二月に近日点を通り過ぎてから尾が大きくなるらしいんだけど、それだと緯度が低すぎるし、見える時間が早朝だから夜明けと重なっちゃう。でもね、今だと夕方から西の空に見えるんだって! ……今じゃないと間に合わないの。ただ、都会の中だと明るすぎて見えづらいし……」  相変わらず僕には美伽が何を言っているのかよく分からなかった。理解できたのは一月初旬の今しか見る機会無く、都会の真ん中では見えづらい、ということだけだった。   「ふーん、じゃあやっぱりこの辺じゃ難しいんじゃないの?」 「だからね、ちょっと暗いところに行って見たいなって、例えば高尾山とか……」 「高尾山!?」  僕は大きな声を上げてしまった。夜の高尾山なんてちょっと勘弁してほしい。いくら年中多くの登山客がいるとしても本当に夜は勘弁してほしい。それに中学生二人で夕方から登るなんて許しが出るはずもない。     
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