二人の距離

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 リビングの中に入るとお母さんが紅茶をいれてくれる、これもいつものことだ。なにしろティーバッグじゃない紅茶なんて、この家でしか飲んだことがない。   「領家君、ごめんなさいね、いつも美伽が我儘ばっかり言って」  お母さんはいつもそう言うけれど、僕は美伽がそんなに我儘ばかり言ってるところを見たことがない。 「いえ、ホントに我儘とか……あんまり言わないですよ」  僕は何度飲んでも慣れない高級な紅茶を飲みながら、そう答えた。 「本当にそうなの? 家ではいろいろ我儘言ってるけどね」 「どちらかと言うと、学校では何も言わない方です」 「ああ……、学校ではね、美伽は昔からそうね。でも領家君にはいろいろ言ってると思ってね」 「そうですね、学校では言わないことを、僕には言ってますね」 「やっぱりそうなのね……」  笑うかな、と思ったお母さんが寂しそうな顔になったのが僕には意外だった。 「まあ、美伽のことをよろしくお願いね。遅くなるようだったら電話をいれてね」  そう言ってお母さんは美伽の部屋へ呼びに向かった。  美伽の荷物は重たそうだった。僕が思った通り魔法瓶も彼女は準備していたし、それに加えて毛布、レジャーシート、双眼鏡、おやつ類、もうリュックサックはパンパンだった。 「なあ、関根。荷物を取り替えたほうがいいよ。俺のは軽いからさあ、そっちを持つよ」     
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