犬になった日

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 薄暗い狭い室内。一人の男がうつぶせに倒れている。男を取り囲む様に二人の男が立ち塞がっているが、異様なのは室内の様子。拷問器具か何かの様にずらりと鞭や縄や何に使うか知れたものではない器具が陳列されている。  男が目を覚ました様で、頭を擡げる。高級なスーツ姿の男は現在の状況を理解出来ていない様だ。首を振って思考を保とうと必死で口を開く。 「な、なんだ! 此処は何処だ! 私はバーで酒を飲んで……」 「漸く目を覚ましたかい。待ち草臥れたぜ」  正面側に立つ男がしゃがみ込んで、倒れ込んだ男の髪を鷲掴んだ。ぐい、と無理矢理反らされる身体に、痛みを感じたのかスーツの男が呻き声をあげる。 「私に何をする気だ! さっさと此処から……」 「未だ自分の立ち位置が分かってねえみてえだな。犬」 「な……!?」  犬と呼ばれた男が絶句する。呼んだ方の男はにやにや笑いを浮かべて分厚い唇を動かして、見下した視線で犬を見る。 「良いか。これからお前は俺の犬だ。いや、正確には売られていく犬畜生だ。男の味と鞭の味を覚えて、ちんぽが欲しくって尻を振る、ドM犬に躾けてやるから、喜んで泣き喚け」 「ふざけるな! 私がそんな」 「おい」  男が声を掛けると。後ろに立っていた男が鞭を振るう。スーツの上からとは言え、初めて喰らう鞭の痛みに男は悶絶した。 「がっ……」 「良いか。俺の事はご主人様と呼べ。犬、そうだな……色が白いから、シロと名前をくれてやる。シロ、嬉しいだろう」 「私は人間で……」  ばちん!  服の上からもう一度、鞭が振り下ろされた。 「シロ、返事は?」 「ひ、ひ……やめ、やめて……」 「返事は?」 「は、はい」 「犬は、有難う御座います、ご主人様、とも言えねえのか」  ひゅん。  鞭が撓って男を鞭打つ。痛みに顔を伏せながら、男が絞り出す様に小さな声を出す。 「あ、有難う御座います……ご、ごしゅじん、さま……」 「よし、素直な犬だ。良い犬に躾けてやるから安心しろ。シロ」  がしがしと乱暴にシロと名付けられた男は、安堵の溜め息を吐いた。
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